僕らが演じるものは、何がいいだろう。
並べて眺めたときに数が多いもの?
昨日世界のどこかで使われたもの?
舞台はここ。今、皆同時に立っている。
舞台はここ。もう出番は決まっているんだ。
任されたのは、どんな自分を見せたいかの苦悩。
期待することから変わっていくものもあるさ。
完全とは言えない魂で、暗転を待つその日まで。
似ているようでも必ずどこかが違うもの。
苦しいほど飲み込んでもまだ欠けているもの。
誰かに愛された誰かには、なれないもの。
僕らが愛したい僕らを、認めるもの。
僕らが演じるものに望みを持つんだ。
その名前があって、血が通って、声が聞こえる。
“僕らが演じたものは必要だったんだ”
そんな言葉で幕引きに向かう。
素晴らしい世界は出入りする者を選ぶ。
あぶれた者同士で踏む醜いステップが悲しい。
救いようのない日々の隙間に
見落としていた風景をつなぎ合わせた。
君にも見て欲しかった。
明日の朝が来るまでには、
世界は変わってはいないだろうけど。
君の永らえた現実を
失くさないための歌を放った。
この旋律が忘れがたみ。
明日の朝までの忘れがたみ。
素晴らしい世界が本当にあるというなら、
あの子を助けてあげて。
天の導きというやつで。
“許して”を繰り返していたことだけが記憶に残る。
黙で話をしましょう。永遠に声は届くだろう。
素晴らしい世界にたどり着くのは、
交叉路に大海を見るくらい難しい。
あるいは君の旅立った先が、と祈っています。
明日の朝が来るまでには
世界は変わってはいないだろうから、
君を見限った現実を
認めないための歌を放った。
次の君までの忘れがたみ。
私の影を見てほしい。
無慈悲なビル群に遮られ、
太陽の光なんて届かないさ。
それでも、散乱した光の残りかすに縋りついて、
やっと映してもらえた私の影は、
顔も知らない人間たちに踏まれていくんだ。
ああ、私の影を見てほしい。
見えていますか。
ここにいる私の影。
人の宿命ってものは
おぎゃあと鳴き喚いたときに決まっている、
なんて言うのは、
まだこの最中に漂っているからだ。
向き合って、嫌いになって、
折れそうになって、踏ん張って、
解ろうとして解らなくて、
変わろうとして変われなくて、
戸惑って、踏み出して、進んで、
進んで、進んで、進んで戻って、
振り返って、受け入れて、
少しだけ許せたとき、
やっと「僕」になるっていうことだろう。
やっと「私」になるっていうことだろう。
それまでは生きろよ。
行く手、霧がかったことを、
さ迷い詰まったとは言わない。
それを写し出す光がまだあるということに、
救いはあるのだから。
幾数年先、この苦悩を讃えよう。
夜空の真ん中を決めるのにためらい、
まだ書き始められないでいる。
見ればそれだけ違うところばかり見えて、
ちょうどいい場所が定まらない。
何度目の夜を迎えたんだろう。
星が落ちるなら簡単だが、
動かないままの散った瞬きに思う。
真ん中はなくとも美しいと。
千切れそうな心に、精一杯の点をひとつ。
何かの始まりになるか、
目印になるのかもしれない。
世界のどこかで懸命に生きているひとりも、
誰かの始まりになって、目印になるのでしょう。
噂の営みに乗り合いを拒まれ、
これ当然と折れる人がいた。
あの夜空も型を変え続けるのです。
運命も一様に移ろいゆく。
千切れそうな心に、精一杯の点をふたつ。
何かの続きにもなるか、
意味が生まれるかもしれない。
出来栄えはわからないが、そのとき思い出すだろう。
これはあの日、あれはまた別の日。
違いは隠しておいてもいい。
順序は後から悔やめばいい。
だから消してしまうことはない。
千切れそうな心で、精一杯の点をつなげ。
誰かの続きになって、意味を与えられたのでしょう。
玄関先に座って、泣きべそをかいていた。
逃げ出そうにも帰る場所はここしかない。
いつの間にか思い込んでいた、
当たり前というまぼろし。
違うことに戸惑ってしまって、泣いていたんだね。
どうしてそうなったのかは教えてもらえないから、
悪いのは自分なんだろうと、
責めるしかなかった十月。
見えなくとも、見えなくとも、
残っているものがある。
この季節の空にだけ蘇る記憶。
どうせなら消してしまいたかったそれも、
体の中を流れている。
今は生きているわけだから、
要らないものじゃないのさ。
陽の当たらない六畳一間は、ただの檻さ。
夜寝ていても悪い空気を飲んでいるみたいで。
教えてもらったのは、
人は順番を決めたがるってこと。
後回しにするくらいなら触れなければいいのに。
期待するのはもうやめようと、扉を閉めた十月。
離れても、離れても、残っているものがある。
影を作ってしまうだけのそれも、
おめでとうを歌う。消えぬように歌う。
見えなくとも、見えなくとも。
離れても、離れても。
揺られている。途切れることはなく、
人はすべて揺られている。
乳呑み子は教えられた。
これからの日々を堪えるように。
揺れ続ける籠の中にいれば、
変わらない距離ではいられない。
当然でしょう。人という型は皆違うのだから。
隔たりを煩うなよ。
生き抜けば等しいのさ。
君と僕の穢れのない手首を
紫色の痕が残るほどに、
鋼の糸できつく縛りつけたくはないだろう。
だから、揺れ続ける籠の中で生きる。
定められた日々にあっては、
何者かとの差にはどんな意味も生まれはしない。
何者にも成れなかった今こそが正しい。
生き抜けば、等しいのさ。
隔たりを煩うのは、
生き抜いて寄り添うときに。
今日が過ぎてまた今日が来ると思うしかないほど、
私はずっと漂うばかり。糸口のない日々。
何かをまだ探しているような。
何かわからなくなったのに。
不確かなことは確かで。
それでも私は明日に行きたい。
私でなければいけないと
信じられたつもりはないけど。
世界に私がいなければ、世界は誰かを生み出して、
誰かがむやみに費やすのなら、私の心を費やそう。
混じり気ない冷淡な空気。
人間の匂いはしない。
夜のうちに蓄えた涙が、岩肌を縫い落ちる。
こめかみの脈動。到着までの秒を刻む。
棘は指先に赤い線を引く。
私は行くと決めたから。
向こうから見える風景まで。
信じられたつもりはないけど、
私でも足りうる命だったと、
信じるくらいは許してほしいよ。
世界が世界に明日を継ごうと望むのなら、
私の心を費やそう。
どうしたって変わらないことが
世界にはたくさんありすぎて、
あれでもこれでも見境なしに
変わらないことだと諦める。
いつになっても消えない落書きが、
嫌いな部屋にこびりつく。
逃げ出したいのは思い違いか。
始まらなかったものにあてはめる。
汚れたものは全部、全部落ちていく。
全部、全部、全部。
この地面の一番深いよどみに飲まれてゆく。
だから平気。平気だよ。平気。
私は平気。平気、平気。
人を遠ざける才能があっただけ。
どうしたって終われないことが
自分が終わるしかないときだってある。
大切なのは、終わらせ方だ。
誰かを泣かせるのは違う。
誰かに恨まれるのは違う。
あなたが泣いているのは違う。
あなたが恨めしいのは違う。
辛辣な言葉に出会った。
心は焦げて軽くなって、はらりと腹の底に落ちた。
形もわからなくなって落ちた。
存在範囲を失った。 涙腺は詰まって流れず、
迷子の雫も落っこちた。温度は奪いとられて落ちた。
ものさしが足りないと気づいた。
心はまた焦げて軽くなって、
はらりと腹の底に落ちた。
形なんて残らずに落ちた。
輪っかはすでに続いていた。
涙腺は今も詰まったまま、
迷子の雫も落っこちた。摂氏0.001度で落ちた。
灰は埃を舞い上げていたが、
使い古しの涙が固めていった。
絶望でさえも、削れやしない。
最悪でさえも、崩せやしない。
そういう強さが宿ってゆくなら、
幾度でもいい。繰り返してやろう。
何万年とは言わないが、年月は形を与える。
悲しみの分だけ立派になれよ。
悔しさの分だけ美しくなれよ。
積み上がった灰の城はいびつながら、
心までまた届くだろう。
そういう強さが宿ってゆくのを、
信じ抜くのが生きるってことか。
呼吸をいつか止められたとき、
この中身を広げてください。
大切にいつも守ってきたもの。
誰かのためにもなれるように。